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最高裁判所第二小法廷 昭和38年(オ)1071号 判決 1964年6月26日

上告人

株式会社大阪新聞社

右代表者代表取締役

水野成夫

右訴訟代理人弁護士

高坂安太郎

被上告人

稲垣孝一

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人高坂安太郎の上告理由第一点について。

所論は、まず本件賃貸借の家賃支払を取立債務と認定した原判決は採証法則に違反する旨主張する。

<中略> 所論は、上告人が賃貸人の地位を承継したから賃料の取立債務とする特殊事情はなくなり持参債務に変更した旨主張する。

しかし、不動産の所有者が賃貸人の地位を承継するのは従前の賃貸借の内容をそのまま承継するのであるから、賃料の取立債務もそのまま承継されると解すべきである。所論のように賃料の取立債務が当然に持参債務に変更するものではない。所論は、独自の見解であつて、採用しがたい。

同第三点について。

原判決は、上告会社が一月金五、〇〇〇円の値上げを固執し、催告当時においてもそれ以下の金額では家賃の協定に応ずる意思がなく、弁済の提供を受けてもこれを受領しないような態度を示していたことがうかがえる旨判示しており、原判決挙示の証拠によると、右事実はこれを容認しえないわけではない。

それゆえ、右のような場合においては、値上相当額月金三、九八九円を金一、〇一一円しかこえない賃料月金五、〇〇〇円の割合による家賃債務についての支払催告であつても、適法な催告といいがたく、したがつて、過大な催告としてその効力を否定した原判決の判断は、正当としてこれを容認しうるところである(論旨引用の判例は、本件に適切でない。)。

所論は採用しがたい。

同第二点および第四点について。<省略>

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官奥野健一 裁判官山田作之助 城戸芳彦 石田和外)

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